歌:キミノオルフェ
作詞:蟻
作曲:蟻
彼女は風速320kmの苦沙味をして
白い雪の様な唾を 僕にかけた
蒸し暑い日 彼女の机の上に
赤い封筒 ザラついた窓
カーペットの染みは猫みたいだ
茹で上がった水槽の魚は動かない
「探さないで下さい」は
「探して下さい」の同義語?
どうなんだ
流動する砂の様な彼女を捕まえに
しょうがない 虫網を持つか
気を持たせようとする
君の悪い癖ごと 閉じ込めてあげる
カーテンの隙間から
無数の針で刺す太陽
雲はぶよぶよした粘土の塊
小銃の玉のように打ち付ける大雨
彼女はその全てを楽しそうに見ていた
はしゃぐ君を 踊る君を
喘ぐ君を 眠る君を
君を惑わす全てのものから
隠してあげる
眩暈のように軽やかな足跡を追いながら
彼女を見つけた日の事を思い出していた
モルフォ蝶の青い花畑で
寝息を立てていた その無防備な姿
激しさの中で充血した羽根は
奇跡みたいに等間隔の鱗粉を飛び散らせ
脈打ちながら僕を包み込んだ
熱を帯びた美しさだけは
標本には出来ない
優しく笑いかける老人も
口の中へ入って皮を剥けば
いとも簡単に姿を変える
剥き出しの虫歯みたいに弱く見える者ほど
その胸の内に悪魔を住まわせているんだ
誰も信じてはいけない
そのことを何度も彼女に教えておいたのに
彼女は疑うことを知らなかった
僕を見つめたその瞳さえ
水の様に澄んでいた
彼女には僕がいなきゃ駄目なんだ
扇ぐ 風の感覚
甘い いつも見てた花
月に 手が届きそう
こうなる前に虫ピンで二度と
飛べないようにしておけば良かった
背中から湧き水のような血が滲んだら
ノートの1ページ目のような
ハンカチを押し付ける
君を生かすのも殺すのも僕だ
はしゃぐ君を 踊る君を
喘ぐ君を 眠る君を
蜘蛛の糸に引っ掛かり
夜に引きずり込まれぬことを
どうか彼女の美しい羽だけは
どうか彼女の美しい羽だけは
夜の糸を掻き分けて
見つけ出した時にはもう
彼女は傷だらけで小さくなって
震えていた
美しかった羽もその原形は無く
氷のダイヤのようにあっけなく溶けていった
キズのついた君ならもういらない
1人で何処にでも行けばいい
君の好きな場所へ 何処にでも
「さようなら」
自由を手に入れた君は
誰より 誰より
誰より 美しかった
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