歌:朴路美
作詞:朴路美
作曲:レナード衛藤
降りしきる雨の中 私は父の背中を
じっと見つめている
雨が激しさを増した時
父は拳をギュッと握りしめ 小刻みに震えだした
祖母の小さい小さい体 黒いリボンの写真
はじめて見る 父の泣いてる姿
その背中から 無数の哀しみの糸が
私へと絡みついてくる
そして 遠い 遠い記憶の彼方へと
私を引きずるように誘っていく
聞きなじんだなつかしい不協和音
私をいらだたせる呪文のような
私を不安にさせる 暗号のような
ハングル
頭を駆け巡る
ぐるぐるぐるぐる……
すべてが私を 遠い 記憶へと誘っていく……
熱く 激しい 暖かで穏やかな 血の記憶へと……
どこかで音がする なんの音だろう
風だ 風の音だ 激しく畝る波
海 海の音だ 船 小さな小さな船
船の上だ
その船の上にいるのは
そこにいるのは…あれは あれは
ハルモ二…ハルモニだ
吹き飛ばされてしまいそうなハルモニ
ただ一点を真っ直ぐ 真っ直ぐに見つめ続けている
荒波に向かって 幼き父を胸に抱き
力強く そして やさしく……
その先にいるのは…その先にいるのは…あれは…
ハラポジ…ハラポジだ
絆というあたたかな血は
荒れ狂う波に憤然と立ち向かい
帰るべき場所へと力強く運んでいく
帰るべき場所 愛しいものたちの腕の中へ
遠い 遠い ただ一点をまっすぐに
遠い 遠い 血の記憶
熱く 激しい 熱く 激しい…
雨が小止みになってきた
あの不協和音が
沁みるように私の中へと流れこんでくる
唄の代わりに語っていた
まだ半島にいた頃の思い出
彼らが交わしていたのは
遠い 遠い記憶の扉への 暗号だった…
ハルモニの写真と目があった瞬間
私の頬を 涙が つたった
父が ゆっくりと ゆっくりと 私に近づいてくる
私は 父にありったけの思いを込めて 伝えたい
「パパ おかえりなさい」
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